差別発言、セクハラ、虚言と問題だらけのトランプですが、次期大統領と決まってから現実問題として一番に浮上してきたのが、conflict of interestです。日本語で言うと利益相反。

トランプは国際的に展開しているトランプ・エンタープライズの経営者です。アメリカ各地、そして海外にもトランプの名前のついたホテルやビルやゴルフ場があります。その他トランプブランドの商品も販売しています。たとえば、海外の要人がワシントンDCを訪れた場合、アメリカ大統領の心証をよくするためにトランプ・ホテルのスイートに宿泊するかもしれません。また、外国にトランプタワーやゴルフ場を作るために政治的圧力を使って国の認可を素早く受けることもできてしまいます。

つまり企業経営者が大統領になるということは汚職の種だらけになるということです。そもそも、どこまでが汚職かという区別さえつけられません。ですからこれまでの大統領は問題を避けるために例外なく個人資産をblind trust(白紙委任信託)にしてきました。ブラインド・トラストとは資産を清算(現金化)して第三者にその管理を託し、任期中はその財産の運用状況について本人には一切知らされないというものです。そもそも大統領になる時点ですでにプロの政治家であるのが普通ですからトランプのようなケースそのものが例外なのですが、企業に投資している資産などもすべてブラインド・トラストにするのが大統領の常識でした。

が、トランプの対策はトランプ・エンタープライズを自分の3人の子どもたちに託すというもの。それではブラインド・トラストにはならないのですが、トランプは完全なブラインド・トラストにする気はさらさらないようです。これにはメディアや民主党ばかりではなく、共和党内部からも批判があるのですが、トランプは自信満々です。

なぜかというとほとんどの公務員に適用されるconflict of interestを禁じた法律が大統領には適用されないから。大統領はそうした心配のない自己倫理をもつことが前提だからです。だからこそ歴代の大統領は「李下に冠を正さず」ということで資産をブラインド・トラスト化してきました。「法律がなければなんでもあり、法律があってもすり抜けられれば勝ち」みたいな倫理基準の持ち主が大統領になることが想定外だったわけです。

が、conflict of interestが適用されなくとも、収賄禁止法は大統領にも適用されます。トランプ・ホテルを海外の要人が利用しただけでも、それが収賄ではないということを証明することは容易ではありません。つまりトランプ・エンタープライズが営業しているだけで弾劾の種が次々出てくるというわけです。共和党内部からも批判があるのは、それがわかっているから。

それにしても、どうしてこんなにわかりやすい問題が選挙期間中にヒラリーサイドからもメディアからももっと深く追及されなかったのでしょう。きっとトランプ大統領実現の可能性を誰も想定していなかったからです。もっと真剣にトランプが大統領になったら何が起こるかをシミュレーションしていれば、こんな悪夢は避けられたかもしれないのに、と思うとまたやりきれなくなります。

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