英単語からアメリカがわかる

在米ライター黒田基子の使える時事ネタ英単語

カテゴリー: 政治 (1ページ / 4ページ)

buffoon (バフーン)

ラテン語のbuffo(道化)が語源だそうで、英和辞典には「道化者、おどけ者」とあります。が、アメリカのニュースに登場する場合は、まずそんな可愛らしいものではなく「裸の王様的バカで悪目立ちする下品なやつ」というイメージです。ウェブスターによると、「1. a ludicrous figure 2. a gross and usually ill-educated or stupid person」とありますが、まずポジティブな意味では使われません(イギリス英語では異なるらしいです)。日本人にはバフーンという語感がアメリカ的buffoonの意味にしっくりくるので、一度聞いたら覚えやすい単語です。
日本のニュースでいえば森友疑惑の籠池氏みたいなのがbuffoonです。が、籠池氏などはまだ可愛げのある方で、the king of buffoonsといえば言わずと知れたドナルド・トランプ。実際にはこんな風に使われます。

「Everyone knew that Jared’s father was a felon and her father was a buffoon, but you looked past that because they stood on their own two feet and were sophisticated and presentable. They were accepted despite their parents. Now, there’s no separating the two.」

これはイバンカ・トランプとジェレッド・クシュナーの友人が匿名でPoliticoの取材に語ったコメントです。「ジェレッドの父親が犯罪者で、イバンカの父親がバフーンだってことは誰だって知ってるけど、以前は二人とも独立してやってたから洗練されたイメージでいられたし、親があんなでも受け入れられてた。でも今じゃ二人とも親と同じ」。

かつては、「あのトランプの娘なのに…(きれいだ、やり手だ、等々)」と語られていたイバンカも、今じゃ「やっぱりバフーンの娘だった」と思われているわけです。トランプ政権発足時には極右で固めたトランプ政権を、少なくとも女性問題やLGBT、環境問題などでは中道に引き戻す役割を期待されていたジェレッドとイバンカですが、何の役にも立たないどころかトランプと一緒に汚職疑惑の輪を広げています。最近はアメリカ国内では二人ともすっかり影を潜めています。

そのイバンカを、日本のテレビニュースで久しぶりに見て仰天しました。来日の様子が、まるで世紀の映画スターでもあるかのように報道されていたからです。トランプ政権発足以来、日本のメディアのトランプ関連の報道は、どうもずれていると思い続けてきました。いつまでたってもトランプが通常のアメリカ大統領であるかのように報道している上に、イバンカ・トランプに対してはホワイトハウスの宣伝文句を鵜呑みにしたような過大評価ぶり。相手はバフーンですから、トランプを政治家として分析しても意味がありません。さらにトランプ通と称するコメンテーターの「イバンカがどんなにトランプ政権で重要か」という解説をきくに及んではもう唖然とするばかり。

イバンカ来日には「本国ではもう使えないけどアジアじゃ人気があるらしいから、ちょっと先に送っとこうか」という思惑があまりにも見え見え。日本もバカにされたもんですが、その期待にしっかり応える日本のメディアの報道にはさらに泣けてきます。そして、世界の女性リーダーたちには全く相手にされていないイバンカを女性の社会進出のリーダーであるかのように勘違いして国賓のようにもてなすシンゾー・アベ。バフーン・トランプとの絆の強さを自慢げに語る首相というのも相当バフーンが入ってます。

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status quo (ステータス・クオ)

現状維持。このstatusは地位ではなくて、状態という意味です。quo(クオ)という耳慣れない単語はラテン語。status quoで今の状態そのままという意味です。この成句自体はネガティブなものではありませんが、ニュースに出てくる場合は大抵はネガティブな意味で使われています。

英語版のウィキペディアには「The status quo is generally perceived negatively by supporters of the social movement, and people who want to maintain the status quo can be seen as being resistant to progress.(status quoは一般的に社会運動の支援者にはネガティブにとらえられ、status quoを保とうとする人々は進歩への抵抗とみなされる。)」とあります。つまりstatus quoは「社会は常に進歩すべきである」という通念に反するわけです。

status quoは政治家がよく使う言葉です。一見リベラル派が使いそうな言葉ですが、今のアメリカではちょっと事情が違います。たとえば共和党の悲願であるオバマケア(健康保険法案)廃案に反対するリベラルは、共和党から見れば健康保険の「改正」に反対してstatus quoに固執している人々であるという理屈が成り立つからです。イバンカ・トランプまでもが「父は政府を変えようとしているのにstatus quoにこだわる人たちがそれを妨害している」といったナンチャッテ政治家発言をしています。まあ、確かにトランプは民主国家のあるべきstatus quoを日々破壊していますが。

今、トランプと共和党の推進する「変化」に対抗するため、リベラル派はstatus quoを守る側になっています。特に健康保険の問題では各地で共和党法案に対するプロテストが起きていています。が、健康保険でstatus quoを守れても、それでめでたしというわけにはいきません。そもそもトランプを生んだアメリカのstatus quoを変えなければ問題は解決されないからです。

そして、二大政党制のアメリカでは、共和党とトランプに対抗する唯一の頼みの綱は民主党なわけですが、その民主党がstatus quoに固執することは驚くばかりです。アメリカ人の支持が格差是正を目指すプログレッシブな方向にシフトしていることは去年の選挙で明確になっているにも関わらず、改革路線を打ち出す気配はありません。「所詮はポリティカリーコレクトなプロビジネス政党」というイメージのままなのです。これをバーニー・サンダースは「ファーストクラスシートを確保するためにタイタニックに乗り続ける人たちがいる」と言っています(相変わらずバーニーの発言はわかりやすい)。

現在の民主党幹部の裸の王様ぶりはトランプ顔負けです。今やヒラリー以上に嫌われ者のナンシー・ペロシをリーダーにしたままでは、2018年の中間選挙は勝てないし、次の大統領選挙だって危ない。世間はトランプのトンデモぶりに気をとられていますが、その先を考えると一番深刻なのがこの民主党のstatus quoです。

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gaslighting(ガスライティング)

「Gaslight(ガス燈)」(1938)というパトリック・ハミルトンの戯曲から生まれた心理学用語です。1944年にイングリット・バーグマン主演で映画にもなった『ガス燈』は、妻に自分の犯罪を気づかれそうになった夫が、さまざまな小細工を仕組んで、妻に自分が正気を失っていると思い込ませるというミステリーです。Gaslightingとは相手に誤った情報を与えて現実感覚を狂わせる手法で、ソシオパスがよく被害者に対して行う精神的虐待だと言われています。

トランプ大統領は就任以来、さまざまなメディアからAmerica’s gaslighter in chiefと言われています。就任式の報道官の「史上最大の観衆」という大嘘発言に始まり、オルターナティブファクト発言、根拠のないオバマ盗聴発言と、もうどれが嘘というより、トランプのツイッターとホワイトハウスの発表は嘘がデフォルト状態です。閣僚人事も問題のない人物は誰一人としていない状態。縁故主義、利益相反の種は山盛り、ロシア疑惑はますます深まるばかり。これが通常の政権ならどれ一つとっても日本の森友学園なみの大騒動になってもおかしくないものばかりなのですが、あまりに次から次へと起こるので誰もフォローすることができません。移民政策、健康保険案と、政策が出てくるたびに、そのろくでもなさに唖然とするばかり。反対運動だって何にフォーカスしていいかわからないような大忙しです。

そうした中で、いつのまにか超保守のゴーサッチは連邦最高裁判所判事として承認され、トランプは議会の承認も得ずにシリアを爆撃。アフガニスタンにも大型爆弾を落とし、今や北朝鮮にも戦争をしかけかねない勢いです。トランプの外交方針や政治的意図なんてものは考えるだけ無駄(そんなものないから)というのはもうとうからアメリカのまともなメディアでのコンセンサスです。ガスライティングに長けているトランプですが、ガスライティングの手法もますます大がかりにしないともたなくなってきています。

「素早い」シリアの爆撃が「悪者を成敗する強いアメリカ」を示して「大統領らしい」行動だと国民に受けたと思い込んでいるトランプにとって、軍事行動はまったく進まない政策やロシア疑惑のめくらましに最高です。強いアメリカが好きなトランプサポーターをガスライティングのコントロール下におさめておくのにこんなに便利な方法はありません。もともとトランプのようなmale chauvinist(男性優越主義者)は軍事好きと相場が決まっています。大統領就任式にも北朝鮮のような戦車のパレードを希望したものの軍部に断られた(当たり前だ)ということが報道されています。

この金正恩状態のトランプをとめるべき議会も、共和党はトランプサポーターこわさに腰がひけてるし、過半数をとれない民主党は無力です。今や外交政策では中国やロシアの方がはるかに大人でまともな大国に見えます。「Make America Great」どころか「Make America Infantile」です。ちなみにトランプは習近平との首脳会談で「中国と韓国には千年におよぶ複雑な歴史がある」と教えてもらったのだそうです(絶望)。習近平でもプーチンでもいいからこいつを止めてくれないかと願うしかないというのがアメリカの現状です。

*「トランプ大統領4:トランプ政権はいつまでもつのか?」を更新しました。

https://nyqp.wordpress.com/

こちらも合わせてぜひどうぞ。

 

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constituent(コンスティテュアント)

英和辞典をひくと成分とか要素といった訳が一番に出てきますが、constituentがニュースに出てくれば通常、それは有権者という意味です。

constituentは日本語の「有権者」に比べると、ずっとカジュアルに使われる言葉で有権者全般ではなく、その特定の選挙区の有権者を指します。たとえば国会議員に対して「I am a constituent.」と言えば、「私はあなたの選挙区の有権者である」という意味になります。このconstituentが先週末からのニュースに頻発しています。

今週はアメリカの国会が中休み。国会議員はそれぞれの地元に戻っていたのですが、そこに待ち構えていたのがconstituentのプロテスト。全国各地で共和党国会議員のオフィスは大変なことになりました。

トランプ大統領誕生以来、反トランプのプロテストはあちこちで発生していますが、トランプ政権が招く危機的状況はますます深まるばかり。プロテストも盛り上がる一方。最初はデモが中心だった反トランプ運動も形態を変えつつあります。ネットを通じて広まった有効なプロテスト戦略として、まずそれぞれの地元の国会議員から攻略せよ、という方法が浸透してきたのです。ターゲットは国会のマジョリティであり、トランプを支持している共和党議員。そして次期選挙で議席を失うことを何よりも恐れている国会議員に有効なのは、署名よりも実際に電話をかけたり、事務所に出向くことなのだそうです。これは、かつて保守派のティーパーティがとった戦略と同じで、これによって当時のオバマ政権下の民主党は大敗を喫しました。

かくして国会議員のオフィスは電話がパンク状態になり、通常なら注目を集めることのない地元有権者との対話集会には会場に入りきれないほどの「怒れるconstituent」が詰めかけることになりました。抗議と質問責めに合う各地の共和党国会議員の様子が盛んに放映されていましたが、ホワイトハウスは「これはリベラルに組織されたプロのプロテスターであって民意ではない」と相変わらずな反応。が、かつて同じようにティーパーティのプロテストに真剣に取り組まなかった民主党がどんな目にあったかを知っている共和党国会議員がこれにびびらないわけはありません。

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nuclear football(ヌクリアー・フットボール)

「核のフットボール」といっても、核を投げ合うゲームではありません。アメリカ大統領が核兵器の使用を決定する際に必要な、いわゆる核のボタンが収納されているブリーフケースのことです。

非常時に備え、大統領の行くところにはいつであれどこであれ、nuclear footballと呼ばれる大きくて重そうなブリーフケースを下げた兵士が必ず付き従います。ケースの中には実際に核兵器のリモコンが収納されているわけではなく、核兵器の使用に際して必要な手続き資料や書類その他がすべて入っているのだそうです。が、大変物騒なものであることに変わりはありません。

さて、先日訪米した安倍首相はトランプにディナーに招かれました。これはどの大統領でもやる普通のことです。普通でなかったのはその場所がホワイトハウスではなく、トランプ所有のフロリダの超高級会員制ゴルフクラブ「マールアラゴ」だったこと。日本でもずいぶん報道されていた「ゴルフ外交」の後のディナーです。大統領所有のゴルフクラブを外交接待に用いる(経費は政府が払う)のも明らかな利益相反ですが、今回もっと大きな問題になったのはトランプ政権のセキュリティ意識の欠如。

ディナーの場所はゴルフクラブのクラブハウス。貸し切りでもなんでもなくクラブのメンバーであるお客がまわりに大勢いるところです。しかも屋外。ちょうどその最中に飛び込んできたのが、北朝鮮ミサイル実験のニュース。ディナーテーブルは緊急の戦略会議と化しました。一般人のお客がいるレストランのど真ん中で。その様子が報道され、ホワイトハウスはディナーの場では機密情報は交換されていないと言い訳していましたが、そういう問題以前だろうって話です。

で、nuclear footballですが、これもこの晩に物議をかもしたものの一つだったのです。それは「マールアラゴ」に客として来ていたお金持ちの一人がnuclear footballを持って大統領に付き従っている兵士と一緒に写真を撮って「ほら、これがnuclear footballだ」と得意げにソーシャルメディアに投稿したから。軍の規定には触れていないそうですが、そもそも規定以前に常識はずれな出来事です。

nuclear footballがトランプの手元にある間、世界はおちおち眠れません。

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