英単語からアメリカがわかる

在米ライター黒田基子の使える時事ネタ英単語

カテゴリー: 政治 (1ページ/3ページ)

constituent(コンスティテュアント)

英和辞典をひくと成分とか要素といった訳が一番に出てきますが、constituentがニュースに出てくれば通常、それは有権者という意味です。

constituentは日本語の「有権者」に比べると、ずっとカジュアルに使われる言葉で有権者全般ではなく、その特定の選挙区の有権者を指します。たとえば国会議員に対して「I am a constituent.」と言えば、「私はあなたの選挙区の有権者である」という意味になります。このconstituentが先週末からのニュースに頻発しています。

今週はアメリカの国会が中休み。国会議員はそれぞれの地元に戻っていたのですが、そこに待ち構えていたのがconstituentのプロテスト。全国各地で共和党国会議員のオフィスは大変なことになりました。

トランプ大統領誕生以来、反トランプのプロテストはあちこちで発生していますが、トランプ政権が招く危機的状況はますます深まるばかり。プロテストも盛り上がる一方。最初はデモが中心だった反トランプ運動も形態を変えつつあります。ネットを通じて広まった有効なプロテスト戦略として、まずそれぞれの地元の国会議員から攻略せよ、という方法が浸透してきたのです。ターゲットは国会のマジョリティであり、トランプを支持している共和党議員。そして次期選挙で議席を失うことを何よりも恐れている国会議員に有効なのは、署名よりも実際に電話をかけたり、事務所に出向くことなのだそうです。これは、かつて保守派のティーパーティがとった戦略と同じで、これによって当時のオバマ政権下の民主党は大敗を喫しました。

かくして国会議員のオフィスは電話がパンク状態になり、通常なら注目を集めることのない地元有権者との対話集会には会場に入りきれないほどの「怒れるconstituent」が詰めかけることになりました。抗議と質問責めに合う各地の共和党国会議員の様子が盛んに放映されていましたが、ホワイトハウスは「これはリベラルに組織されたプロのプロテスターであって民意ではない」と相変わらずな反応。が、かつて同じようにティーパーティのプロテストに真剣に取り組まなかった民主党がどんな目にあったかを知っている共和党国会議員がこれにびびらないわけはありません。

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nuclear football(ヌクリアー・フットボール)

「核のフットボール」といっても、核を投げ合うゲームではありません。アメリカ大統領が核兵器の使用を決定する際に必要な、いわゆる核のボタンが収納されているブリーフケースのことです。

非常時に備え、大統領の行くところにはいつであれどこであれ、nuclear footballと呼ばれる大きくて重そうなブリーフケースを下げた兵士が必ず付き従います。ケースの中には実際に核兵器のリモコンが収納されているわけではなく、核兵器の使用に際して必要な手続き資料や書類その他がすべて入っているのだそうです。が、大変物騒なものであることに変わりはありません。

さて、先日訪米した安倍首相はトランプにディナーに招かれました。これはどの大統領でもやる普通のことです。普通でなかったのはその場所がホワイトハウスではなく、トランプ所有のフロリダの超高級会員制ゴルフクラブ「マールアラゴ」だったこと。日本でもずいぶん報道されていた「ゴルフ外交」の後のディナーです。大統領所有のゴルフクラブを外交接待に用いる(経費は政府が払う)のも明らかな利益相反ですが、今回もっと大きな問題になったのはトランプ政権のセキュリティ意識の欠如。

ディナーの場所はゴルフクラブのクラブハウス。貸し切りでもなんでもなくクラブのメンバーであるお客がまわりに大勢いるところです。しかも屋外。ちょうどその最中に飛び込んできたのが、北朝鮮ミサイル実験のニュース。ディナーテーブルは緊急の戦略会議と化しました。一般人のお客がいるレストランのど真ん中で。その様子が報道され、ホワイトハウスはディナーの場では機密情報は交換されていないと言い訳していましたが、そういう問題以前だろうって話です。

で、nuclear footballですが、これもこの晩に物議をかもしたものの一つだったのです。それは「マールアラゴ」に客として来ていたお金持ちの一人がnuclear footballを持って大統領に付き従っている兵士と一緒に写真を撮って「ほら、これがnuclear footballだ」と得意げにソーシャルメディアに投稿したから。軍の規定には触れていないそうですが、そもそも規定以前に常識はずれな出来事です。

nuclear footballがトランプの手元にある間、世界はおちおち眠れません。

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alternative facts(オルタナティブ・ファクツ)

 ホワイトハウスの報道官、ショーン・スパイサーの初回の会見は「トランプ大統領就任式は歴史上最大の観衆を集めた」という大嘘発表で始まりました。就任式会場の俯瞰写真からもDCの地下鉄利用者数からもトランプの就任式の観衆がオバマの就任式の観衆を下回っていたのは動かせない事実。既に就任式の不人気ぶりはメディアで大きく報道されていただけに、このあまりにも見え見えな嘘は多くのアメリカ人を唖然とさせました。さらにそれに追い打ちをかけたのが、報道官の嘘を追求されたトランプのアドバイザー、ケリーアン・コンウェイが言い放った名言(迷言)、alternative factsです。
 alternativeというのは「代替の」とか「従来とは異なる」、「もう一つの」といった意味の形容詞です。よく使われる例としてはalternative medicineがあります。alternative medicineとは西洋医学に対して漢方などの東洋医学やハーブ療法などの伝承療法を指す言葉で、この場合、alternativeは「異なるアプローチの」といった意味合いになります。
 が、alternative facts となると話は違います。fact(事実)にalternativeなんてあるわけありません。根拠のまったくない「史上最大の観衆」という報道官の発言を嘘と言わずに「alternative factsを発表しただけ」と言う無理やりな言い訳は、まさにケリーアン・コンウェイならでは。選挙期間中はトランプの問題発言の火消し役で大活躍していたケリーアン・コンウエイは、現在トランプ政権のアドバイザーとして、メディアとのコミュニケーションで重要な役割を担っています。臨機応変に追求をかわす頭の回転の速さと思わずのけぞるようなスーパー詭弁の力技で注目されるキャラです。
 が、いかにケリーアンがクリエイティブであろうとも、alternative factsなんてことが世間に通用するわけはありません。#AlternativeFactsというハッシュタグはあっという間にネットをかけめぐり、リベラルジョークのネタになりました。そもそも就任式の観衆数などどうでもいいような問題ですが、そのどうでもいいことに、誰が見てもわかる嘘をつくこと自体が常識的な理解の範囲を超えています。理解できるのは、これからもホワイトハウス報道官の発表はalternative factsてんこ盛りであろうということだけです。
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Banana Republic(バナナ・リパブリック)

バナナ・リパブリックといってもアパレルブランドのことではありません。トランプが次期大統領に決まってから、たびたびニュースに登場する単語です。娘婿(イバンカ・トランプの夫)ジャレッド・クシュナーが大統領上級顧問というホワイトハウスの要職に就くことが発表された時にも、ニュースにはBanana Republicが飛び交いました。「U.S. decline to Banana Republic.(バナナ・リパブリックに成り下がる米国)」「Is America a Banana Republic?(アメリカはバナナ・リパブリックか?)」「America may go from a global leader to third world banana republic.(アメリカはグローバルリーダーから第三世界のバナナ・リパブリックにまっしぐら)」

日本語版のウィキペディアでは「バナナ共和国」と訳されています。実際にそんな共和国があるわけではなく、政情不安定で、政府の要職が権力を持つ者の血縁者で占められていたり、汚職が蔓延したりしている発展途上国という意味です。もともとは、アメリカとの貿易だけに頼っていた昔の中南米の弱小国を指した言葉ですが、最近のニュースでは、今時存在しないような未開の国なみという自嘲的な意味で使われています。

トランプ政権がスタートしても、トランプ・エンタープライズの巨大な利益相反の問題は、息子2人に委任という意味のない対策のみ。閣僚候補には政治経験のない大富豪が名を連ね、アメリカはまさにバナナ・リパブリックへの道をまっしぐらです。バナナ・リパブリック化を有効に防止できる法律はありません。想定外の出来事に対する法治国家のもろさに唖然とするばかりです。

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secretary of state(セクレタリー・オブ・ステート)

国務長官のことです。セクレタリーは秘書という意味でよく知られていますが、この場合はもちろん秘書ではありません。ちなみに財務長官はsecretary of treasury、国防長官はsecretary of defense、商務長官は secretary of commerce という具合になりますが、法務長官だけはattorney generalです。

国務長官は外交を担当しますが、いわゆる外相より大きな権限をもち、アメリカ閣僚の中でも最も重要なポストです。トランプの組閣人事の中でも、誰が国務長官に指名されるのかは、ずっと注目を集め続けていました。ジュリアーニやらミット・ロムニーやら、二転三転した挙句に、トランプが指名したのはエクソンモービルのCEO、レックス・ティラーソンです。

だいたいトランプが指名した閣僚候補は誰一人として問題のない者がいないのですが、その中でも最も物議をかもしているのが国務長官の人選です。公職経験がまったくない国務長官というのは前例がないこと、プーチンと親しい親露家でありエクソンのCEOとしてロシアとの間に大きな利害関係があること、そしてエクソンのCEOとしてこれまでエクソンの利益のために、しばしばアメリカ政府の外交方針を無視してきたこと、と数え上げればきりがないのですが、だからこそティラーソンを選んだのだというのがトランプの言い分です。

「彼はディールメーカーだ。必要があれば誰とでも仲良くできるのはいいことじゃないか。」と、こういうわかりやすさがトランプの天才的なところです。トランプに限らず、このトランプの人選を支持する人たちの言い分は「レックスはエクソンのCEOとしてエクソンの利益を最優先して成果をあげてきたのであって、国務長官になればアメリカの国益のために能力を発揮するであろう」というものです。

が、アメリカの国益の定義については誰も論じていません。だいたい「お国のため」なんていうお題目にろくなことはありません。そもそも国務長官候補としてティラーソンをトランプにすすめたのはブッシュ政権下で国務長官だったコンドリーザ・ライスだと言われています。コンドリーザ・ライスはエクソンのコンサルタントをしています。そしてティラーソンの国務長官指名を賞賛している政治家の中には、ディック・チェイニー、ドナルド・ラムズフェルドもいます。ブッシュ政権の副大統領と国防長官。ブッシュを担ぎ上げて、あのイラク戦争に突入させたチームです。ちなみにディック・チェイニーが湾岸・イラク戦争を通じて軍需企業ハリバートンで大儲けしたのは有名な話です。

たとえティラーソンがアメリカの「国益」を第一に考えたとしても、その国益が普通の人々の利益につながるとはとても思えません。エクソンという一企業の問題ではなく、これで無国籍(国際)大企業が世界を動かす力がまた巨大になっていくということです。

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