現状維持。このstatusは地位ではなくて、状態という意味です。quo(クオ)という耳慣れない単語はラテン語。status quoで今の状態そのままという意味です。この成句自体はネガティブなものではありませんが、ニュースに出てくる場合は大抵はネガティブな意味で使われています。

英語版のウィキペディアには「The status quo is generally perceived negatively by supporters of the social movement, and people who want to maintain the status quo can be seen as being resistant to progress.(status quoは一般的に社会運動の支援者にはネガティブにとらえられ、status quoを保とうとする人々は進歩への抵抗とみなされる。)」とあります。つまりstatus quoは「社会は常に進歩すべきである」という通念に反するわけです。

status quoは政治家がよく使う言葉です。一見リベラル派が使いそうな言葉ですが、今のアメリカではちょっと事情が違います。たとえば共和党の悲願であるオバマケア(健康保険法案)廃案に反対するリベラルは、共和党から見れば健康保険の「改正」に反対してstatus quoに固執している人々であるという理屈が成り立つからです。イバンカ・トランプまでもが「父は政府を変えようとしているのにstatus quoにこだわる人たちがそれを妨害している」といったナンチャッテ政治家発言をしています。まあ、確かにトランプは民主国家のあるべきstatus quoを日々破壊していますが。

今、トランプと共和党の推進する「変化」に対抗するため、リベラル派はstatus quoを守る側になっています。特に健康保険の問題では各地で共和党法案に対するプロテストが起きていています。が、健康保険でstatus quoを守れても、それでめでたしというわけにはいきません。そもそもトランプを生んだアメリカのstatus quoを変えなければ問題は解決されないからです。

そして、二大政党制のアメリカでは、共和党とトランプに対抗する唯一の頼みの綱は民主党なわけですが、その民主党がstatus quoに固執することは驚くばかりです。アメリカ人の支持が格差是正を目指すプログレッシブな方向にシフトしていることは去年の選挙で明確になっているにも関わらず、改革路線を打ち出す気配はありません。「所詮はポリティカリーコレクトなプロビジネス政党」というイメージのままなのです。これをバーニー・サンダースは「ファーストクラスシートを確保するためにタイタニックに乗り続ける人たちがいる」と言っています(相変わらずバーニーの発言はわかりやすい)。

現在の民主党幹部の裸の王様ぶりはトランプ顔負けです。今やヒラリー以上に嫌われ者のナンシー・ペロシをリーダーにしたままでは、2018年の中間選挙は勝てないし、次の大統領選挙だって危ない。世間はトランプのトンデモぶりに気をとられていますが、その先を考えると一番深刻なのがこの民主党のstatus quoです。

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