英単語からアメリカがわかる

在米ライター黒田基子の使える時事ネタ英単語

月別: 12月 2016

secretary of state(セクレタリー・オブ・ステート)

国務長官のことです。セクレタリーは秘書という意味でよく知られていますが、この場合はもちろん秘書ではありません。ちなみに財務長官はsecretary of treasury、国防長官はsecretary of defense、商務長官は secretary of commerce という具合になりますが、法務長官だけはattorney generalです。

国務長官は外交を担当しますが、いわゆる外相より大きな権限をもち、アメリカ閣僚の中でも最も重要なポストです。トランプの組閣人事の中でも、誰が国務長官に指名されるのかは、ずっと注目を集め続けていました。ジュリアーニやらミット・ロムニーやら、二転三転した挙句に、トランプが指名したのはエクソンモービルのCEO、レックス・ティラーソンです。

だいたいトランプが指名した閣僚候補は誰一人として問題のない者がいないのですが、その中でも最も物議をかもしているのが国務長官の人選です。公職経験がまったくない国務長官というのは前例がないこと、プーチンと親しい親露家でありエクソンのCEOとしてロシアとの間に大きな利害関係があること、そしてエクソンのCEOとしてこれまでエクソンの利益のために、しばしばアメリカ政府の外交方針を無視してきたこと、と数え上げればきりがないのですが、だからこそティラーソンを選んだのだというのがトランプの言い分です。

「彼はディールメーカーだ。必要があれば誰とでも仲良くできるのはいいことじゃないか。」と、こういうわかりやすさがトランプの天才的なところです。トランプに限らず、このトランプの人選を支持する人たちの言い分は「レックスはエクソンのCEOとしてエクソンの利益を最優先して成果をあげてきたのであって、国務長官になればアメリカの国益のために能力を発揮するであろう」というものです。

が、アメリカの国益の定義については誰も論じていません。だいたい「お国のため」なんていうお題目にろくなことはありません。そもそも国務長官候補としてティラーソンをトランプにすすめたのはブッシュ政権下で国務長官だったコンドリーザ・ライスだと言われています。コンドリーザ・ライスはエクソンのコンサルタントをしています。そしてティラーソンの国務長官指名を賞賛している政治家の中には、ディック・チェイニー、ドナルド・ラムズフェルドもいます。ブッシュ政権の副大統領と国防長官。ブッシュを担ぎ上げて、あのイラク戦争に突入させたチームです。ちなみにディック・チェイニーが湾岸・イラク戦争を通じて軍需企業ハリバートンで大儲けしたのは有名な話です。

たとえティラーソンがアメリカの「国益」を第一に考えたとしても、その国益が普通の人々の利益につながるとはとても思えません。エクソンという一企業の問題ではなく、これで無国籍(国際)大企業が世界を動かす力がまた巨大になっていくということです。

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authoritarian(オーソリテリアン)

直訳すれば権威主義者。トランプ支持者のデモグラフィックとして、よく白人男性低学歴といった特長が挙げられるのですが、実は統計的にトランプ支持者を特徴づけるのはこれらの属性よりも権威主義への共感度合なのです。去年12月に1800人の有権者を対象に行われた調査結果によると、教育レベル、性別、収入、年齢、宗教などの属性には統計的に有意な差は見られず、権威主義だけが突出した特徴になっていたのだそうです。(http://www.politico.com/magazine/story/2016/01/donald-trump-2016-authoritarian-213533)

権威主義への共感度合はどのように測定するのかというと、これには1992年から政治科学者の間で使われている簡単な4つ質問があるんだそうです。それは子育てをトピックにして、自分の子どもにとって次のどちらが大切だと思うかをたずねるものです。「respectful または independent」、「obedient または self-reliant」、「well-behaved または considerate」、「well-mannered または curious」。前者を選んだ数が多いほどオーソリテリアン度合が強いということになります。そして、このテストでオーソリテリアンとされた有権者はトランプ支持者である確率が高かったのです。つまり予想に反してトランプが勝利したということは、アメリカのオーソリテリアンが予想以上に増えていたということでもあります。

実はこの統計結果は、今年1月にPoliticoに掲載されたもので、これを最初に読んだころはトランプが大統領になるどころか、共和党候補になることすらも予想していなかったので、あまり気にもとめていなかったのです。が、今になって改めてこの記事のことを思い出しました。

先週、トランプは国防長官に3年前に退役した海兵隊大将のジェームズ・マティスを指名しました。アメリカには、軍をコントロールするのは民間人であるべきという思想から軍人は退役後8年以上経たないと国防長官にはなれないという法律があります。マティスを国防長官に指名したということは、この法律を適用除外にするつもりだということです。このマティスに限らずトランプは軍人が好きです。国家安全保障補佐官に指名されたマイケル・フリンは元陸軍中将、CIA長官に指名されたマイク・ポンペオも元陸軍将校。そして国務長官候補として、デビッド・ペトレイアス(元陸軍大将)の名前も挙がっています。

上院も下院もマジョリティは共和党がにぎっています。おそらく適用除外も通ってしまうでしょう。前述のオーソリテリアン調査でいうと、共和党支持者は民主党支持者に比べて圧倒的にオーソリテリアンが多いのです。そして皮肉なことに二党政治では、非民主的なオーソリテリアンの方が上意下達の統率力で多数決に強い。

反エスタブリッシュメントの嵐で始まった選挙から生まれたのはオーソリテリアン政権だったという陳腐なまでに「歴史は繰り返す」筋書です。

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