英単語からアメリカがわかる

在米ライター黒田基子の使える時事ネタ英単語

月別: 11月 2016

conflict of interest(コンフリクト・オブ・イントレスト)

差別発言、セクハラ、虚言と問題だらけのトランプですが、次期大統領と決まってから現実問題として一番に浮上してきたのが、conflict of interestです。日本語で言うと利益相反。

トランプは国際的に展開しているトランプ・エンタープライズの経営者です。アメリカ各地、そして海外にもトランプの名前のついたホテルやビルやゴルフ場があります。その他トランプブランドの商品も販売しています。たとえば、海外の要人がワシントンDCを訪れた場合、アメリカ大統領の心証をよくするためにトランプ・ホテルのスイートに宿泊するかもしれません。また、外国にトランプタワーやゴルフ場を作るために政治的圧力を使って国の認可を素早く受けることもできてしまいます。

つまり企業経営者が大統領になるということは汚職の種だらけになるということです。そもそも、どこまでが汚職かという区別さえつけられません。ですからこれまでの大統領は問題を避けるために例外なく個人資産をblind trust(白紙委任信託)にしてきました。ブラインド・トラストとは資産を清算(現金化)して第三者にその管理を託し、任期中はその財産の運用状況について本人には一切知らされないというものです。そもそも大統領になる時点ですでにプロの政治家であるのが普通ですからトランプのようなケースそのものが例外なのですが、企業に投資している資産などもすべてブラインド・トラストにするのが大統領の常識でした。

が、トランプの対策はトランプ・エンタープライズを自分の3人の子どもたちに託すというもの。それではブラインド・トラストにはならないのですが、トランプは完全なブラインド・トラストにする気はさらさらないようです。これにはメディアや民主党ばかりではなく、共和党内部からも批判があるのですが、トランプは自信満々です。

なぜかというとほとんどの公務員に適用されるconflict of interestを禁じた法律が大統領には適用されないから。大統領はそうした心配のない自己倫理をもつことが前提だからです。だからこそ歴代の大統領は「李下に冠を正さず」ということで資産をブラインド・トラスト化してきました。「法律がなければなんでもあり、法律があってもすり抜けられれば勝ち」みたいな倫理基準の持ち主が大統領になることが想定外だったわけです。

が、conflict of interestが適用されなくとも、収賄禁止法は大統領にも適用されます。トランプ・ホテルを海外の要人が利用しただけでも、それが収賄ではないということを証明することは容易ではありません。つまりトランプ・エンタープライズが営業しているだけで弾劾の種が次々出てくるというわけです。共和党内部からも批判があるのは、それがわかっているから。

それにしても、どうしてこんなにわかりやすい問題が選挙期間中にヒラリーサイドからもメディアからももっと深く追及されなかったのでしょう。きっとトランプ大統領実現の可能性を誰も想定していなかったからです。もっと真剣にトランプが大統領になったら何が起こるかをシミュレーションしていれば、こんな悪夢は避けられたかもしれないのに、と思うとまたやりきれなくなります。

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Pollster (ポールスター)

大統領選は、周知のように予想を裏切ってトランプ大統領誕生という驚きの結果になりました。数ある世論調査がことごとく大はずれしたのです。ヒラリーを支持した誰もがショックから立ち直れないまま、まず議論の的となったのは「なぜpollsterがこんなにも間違ったのか」ということです。

pollsterは英和辞典には世論調査員とありますが、ちょっと感覚が違います。「poll」が「世論調査」で、pollsterはそれを行う人だから「世論調査員」となったのかもしれませんが、あえて日本語にすると世論調査専門家でしょうか。日本語で調査員というと、実際に人にインタビューしたり調査用紙を配ったりする人のように聞こえますが、Pollsterはpollをデザインしたり分析したりする人のことです。

公的機関から各報道機関、各党の選挙陣営まで、それぞれのpollsterが何人もいますから、かなりの数のpollsterが今回の大統領選挙の世論調査をして結果予想をしていました。それのほとんどがはずれたわけです。

その中で、トランプ勝利を予想していたpollsterもわずかながらいました。選挙前は一笑に付されていましたが、いまや注目のpollster です。そうしたpollsterのメソッドは、どこが違っていたのかということも話題になっています。ポイントとしてあげられたのは、人によるインタビューではなく、自動音声の電話インタビューにしたこと、「あなたの隣に住む人は誰に投票すると思いますか」という質問を加えたこと、などです。つまり、トランプに投票したけれど、それを人には知られたくなかった「隠れトランプサポーター」を拾える調査だったというわけです。

ヒラリー支持者も、ヒラリー支持のメディアもこぞって、トランプ支持者に「無知な人種差別主義者」というレッテルをはり、トランプの方がいいと思ってもそれを言えない空気を世の中に作ってしまいました。その結果、まるで楽勝であるかのような誤った予想が生まれました。ヒラリーの敗因はトランプの強さではなく、ヒラリーへの積極的な支持の弱さです。まさかトランプが勝つとは思わずに選挙に行かなかった人の中にも、接戦だとわかっていたらヒラリーに投票したかもしれない人は確実にいたはずです。なんともやりきれない思いです。

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incumbent(インカンベント)

incumbentとは「現職」という意味で、今、ニュースに出てくるincumbentといえば、共和党の現職上院議員です。

現在、アメリカの国会は上院も下院も共和党が過半数をとっていますが、明日の大統領選挙と同時に下院は全議席、上院は3分の1が改選になります。今回改選に当たっている共和党現職上院議員から民主党が議席を奪って上院の過半数を奪還できるかどうかということも明日の選挙の注目の一つなのです。共和党incumbentは、トランプを支持すれば良識派の支持を失い、トランプ不支持を宣言すればトランプサポーターを失うというジレンマに陥っているので、上院逆転の可能性は高いと見られています。ともかくオバマの提案にはすべて絶対反対を貫いてきた共和党から上院だけでも過半数を取り戻さなければ、ヒラリーの公約だって絵に描いた餅です。

ちなみに大統領選挙は、どの事前調査でもヒラリーの勝利はまず間違いなく、圧勝もあり得ると予想されています。が、Brexit(ブレグジット)の例もあるし、まさかの事態が起こった場合のリスクはあまりに大きい。トランプサポーターそのものがアメリカ人の過半数を超えるとは思えませんが、ヒラリー陣営(と多くのアメリカ人)が恐れているのは、投票に行かない人やprotest vote (プロテストの意思を表明するために勝つ見込みがない第三党候補に投票する)の存在です。

そこで投票をよびかけるべく選挙前日の今日は深夜におよぶまで激戦区で集会が行われています。ヒラリー集会の夜の第一弾、フィラデルフィアは、ブルース・スプリングスティーンやボン・ジョビといったタレントに、オバマ大統領、ミシェル・オバマも加わった前代未聞の派手な集会でした。オバマはペンシルバニア州の共和党incumbentと接戦をくり広げている民主党上院議員候補もガッチリ応援していました。

今、真夜中の12時をまわりましたが、ヒラリーはノースカロライナ州に移動してミッドナイト・ラリーを開催中。ゲストはレディ・ガガだそうです。

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surrogate(サロゲート)

surrogateを英和辞典でひくと「代理人」とか「代行者」とあって、ニュースに出てくるsurrogateというと、まず思い浮かぶのはsurrogate mother (代理母)だと思います。が、最近頻繁に登場するsurrogateは日本語の「代理」とはちょっとニュアンスが違います。たとえば「Michelle Obama is Clinton’s best surrogate.」というふうに使われているのですが、もちろんミシェル・オバマはヒラリーの代理ではありません。Surrogateとは候補者に代わって応援演説をする人や、候補者の意見を代弁したり質問に答えたりするキャンペーンスタッフのことです。

さて、ヒラリー陣営ではオバマ大統領からミシェル・オバマ、バーニー・サンダース、エリザベス・ウォーレンまで人気のある大物サロゲートがあちこちで応援演説をしていますが、トランプのサロゲートになる共和党の大物政治家はほとんどいません。表立ってトランプを支持しているのは、ブリッジゲートのスキャンダルでそれどころではないクリス・クリスティや嫌われキャラのニュート・ギングリッチなど、いろいろな意味で微妙な政治家ばかり。トランプのサロゲートといえば、政治家よりもキャンペーンスタッフです。予備選挙の頃からトランプが問題を起こすたびに「トランプ・サロゲート」として各局のニュース番組に登場していました。

トランプ・サロゲートとしてテレビに出てくるスタッフは何人かいるのですが、本人が女性の敵扱いされているのを意識して女性が多い。しかし金髪ロングヘアのいかにもトランプタイプばかりなのが笑えるところです。が、その中で別格なのはキャンペーン・マネージャーのKellyann Conwayで、SNLの大統領選パロディにも登場するほど有名になりました。出てくるたびにトランプの問題発言や問題行動の言い訳をするのが仕事みたいになっているのですが、ともかく強引な問題点のすりかえと、いくら何でもな無理やりな理論がすごい。もちろん、それはトランプが滅茶苦茶だからで、それをなんとか取り繕うのがサロゲートの仕事なわけです。仕事とはいえご苦労なことだと思っている人も多いと思います。

もっとも政治の世界でキャリアを築いてきたKellyann Conwayはそんなことは先刻承知の上だろうし、選挙結果がどうなろうと、ただでは起きなさそうです。

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