英単語からアメリカがわかる

在米ライター黒田基子の使える時事ネタ英単語

buffoon (バフーン)

ラテン語のbuffo(道化)が語源だそうで、英和辞典には「道化者、おどけ者」とあります。が、アメリカのニュースに登場する場合は、まずそんな可愛らしいものではなく「裸の王様的バカで悪目立ちする下品なやつ」というイメージです。ウェブスターによると、「1. a ludicrous figure 2. a gross and usually ill-educated or stupid person」とありますが、まずポジティブな意味では使われません(イギリス英語では異なるらしいです)。日本人にはバフーンという語感がアメリカ的buffoonの意味にしっくりくるので、一度聞いたら覚えやすい単語です。
日本のニュースでいえば森友疑惑の籠池氏みたいなのがbuffoonです。が、籠池氏などはまだ可愛げのある方で、the king of buffoonsといえば言わずと知れたドナルド・トランプ。実際にはこんな風に使われます。

「Everyone knew that Jared’s father was a felon and her father was a buffoon, but you looked past that because they stood on their own two feet and were sophisticated and presentable. They were accepted despite their parents. Now, there’s no separating the two.」

これはイバンカ・トランプとジェレッド・クシュナーの友人が匿名でPoliticoの取材に語ったコメントです。「ジェレッドの父親が犯罪者で、イバンカの父親がバフーンだってことは誰だって知ってるけど、以前は二人とも独立してやってたから洗練されたイメージでいられたし、親があんなでも受け入れられてた。でも今じゃ二人とも親と同じ」。

かつては、「あのトランプの娘なのに…(きれいだ、やり手だ、等々)」と語られていたイバンカも、今じゃ「やっぱりバフーンの娘だった」と思われているわけです。トランプ政権発足時には極右で固めたトランプ政権を、少なくとも女性問題やLGBT、環境問題などでは中道に引き戻す役割を期待されていたジェレッドとイバンカですが、何の役にも立たないどころかトランプと一緒に汚職疑惑の輪を広げています。最近はアメリカ国内では二人ともすっかり影を潜めています。

そのイバンカを、日本のテレビニュースで久しぶりに見て仰天しました。来日の様子が、まるで世紀の映画スターでもあるかのように報道されていたからです。トランプ政権発足以来、日本のメディアのトランプ関連の報道は、どうもずれていると思い続けてきました。いつまでたってもトランプが通常のアメリカ大統領であるかのように報道している上に、イバンカ・トランプに対してはホワイトハウスの宣伝文句を鵜呑みにしたような過大評価ぶり。相手はバフーンですから、トランプを政治家として分析しても意味がありません。さらにトランプ通と称するコメンテーターの「イバンカがどんなにトランプ政権で重要か」という解説をきくに及んではもう唖然とするばかり。

イバンカ来日には「本国ではもう使えないけどアジアじゃ人気があるらしいから、ちょっと先に送っとこうか」という思惑があまりにも見え見え。日本もバカにされたもんですが、その期待にしっかり応える日本のメディアの報道にはさらに泣けてきます。そして、世界の女性リーダーたちには全く相手にされていないイバンカを女性の社会進出のリーダーであるかのように勘違いして国賓のようにもてなすシンゾー・アベ。バフーン・トランプとの絆の強さを自慢げに語る首相というのも相当バフーンが入ってます。

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status quo (ステータス・クオ)

現状維持。このstatusは地位ではなくて、状態という意味です。quo(クオ)という耳慣れない単語はラテン語。status quoで今の状態そのままという意味です。この成句自体はネガティブなものではありませんが、ニュースに出てくる場合は大抵はネガティブな意味で使われています。

英語版のウィキペディアには「The status quo is generally perceived negatively by supporters of the social movement, and people who want to maintain the status quo can be seen as being resistant to progress.(status quoは一般的に社会運動の支援者にはネガティブにとらえられ、status quoを保とうとする人々は進歩への抵抗とみなされる。)」とあります。つまりstatus quoは「社会は常に進歩すべきである」という通念に反するわけです。

status quoは政治家がよく使う言葉です。一見リベラル派が使いそうな言葉ですが、今のアメリカではちょっと事情が違います。たとえば共和党の悲願であるオバマケア(健康保険法案)廃案に反対するリベラルは、共和党から見れば健康保険の「改正」に反対してstatus quoに固執している人々であるという理屈が成り立つからです。イバンカ・トランプまでもが「父は政府を変えようとしているのにstatus quoにこだわる人たちがそれを妨害している」といったナンチャッテ政治家発言をしています。まあ、確かにトランプは民主国家のあるべきstatus quoを日々破壊していますが。

今、トランプと共和党の推進する「変化」に対抗するため、リベラル派はstatus quoを守る側になっています。特に健康保険の問題では各地で共和党法案に対するプロテストが起きていています。が、健康保険でstatus quoを守れても、それでめでたしというわけにはいきません。そもそもトランプを生んだアメリカのstatus quoを変えなければ問題は解決されないからです。

そして、二大政党制のアメリカでは、共和党とトランプに対抗する唯一の頼みの綱は民主党なわけですが、その民主党がstatus quoに固執することは驚くばかりです。アメリカ人の支持が格差是正を目指すプログレッシブな方向にシフトしていることは去年の選挙で明確になっているにも関わらず、改革路線を打ち出す気配はありません。「所詮はポリティカリーコレクトなプロビジネス政党」というイメージのままなのです。これをバーニー・サンダースは「ファーストクラスシートを確保するためにタイタニックに乗り続ける人たちがいる」と言っています(相変わらずバーニーの発言はわかりやすい)。

現在の民主党幹部の裸の王様ぶりはトランプ顔負けです。今やヒラリー以上に嫌われ者のナンシー・ペロシをリーダーにしたままでは、2018年の中間選挙は勝てないし、次の大統領選挙だって危ない。世間はトランプのトンデモぶりに気をとられていますが、その先を考えると一番深刻なのがこの民主党のstatus quoです。

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gaslighting(ガスライティング)

「Gaslight(ガス燈)」(1938)というパトリック・ハミルトンの戯曲から生まれた心理学用語です。1944年にイングリット・バーグマン主演で映画にもなった『ガス燈』は、妻に自分の犯罪を気づかれそうになった夫が、さまざまな小細工を仕組んで、妻に自分が正気を失っていると思い込ませるというミステリーです。Gaslightingとは相手に誤った情報を与えて現実感覚を狂わせる手法で、ソシオパスがよく被害者に対して行う精神的虐待だと言われています。

トランプ大統領は就任以来、さまざまなメディアからAmerica’s gaslighter in chiefと言われています。就任式の報道官の「史上最大の観衆」という大嘘発言に始まり、オルターナティブファクト発言、根拠のないオバマ盗聴発言と、もうどれが嘘というより、トランプのツイッターとホワイトハウスの発表は嘘がデフォルト状態です。閣僚人事も問題のない人物は誰一人としていない状態。縁故主義、利益相反の種は山盛り、ロシア疑惑はますます深まるばかり。これが通常の政権ならどれ一つとっても日本の森友学園なみの大騒動になってもおかしくないものばかりなのですが、あまりに次から次へと起こるので誰もフォローすることができません。移民政策、健康保険案と、政策が出てくるたびに、そのろくでもなさに唖然とするばかり。反対運動だって何にフォーカスしていいかわからないような大忙しです。

そうした中で、いつのまにか超保守のゴーサッチは連邦最高裁判所判事として承認され、トランプは議会の承認も得ずにシリアを爆撃。アフガニスタンにも大型爆弾を落とし、今や北朝鮮にも戦争をしかけかねない勢いです。トランプの外交方針や政治的意図なんてものは考えるだけ無駄(そんなものないから)というのはもうとうからアメリカのまともなメディアでのコンセンサスです。ガスライティングに長けているトランプですが、ガスライティングの手法もますます大がかりにしないともたなくなってきています。

「素早い」シリアの爆撃が「悪者を成敗する強いアメリカ」を示して「大統領らしい」行動だと国民に受けたと思い込んでいるトランプにとって、軍事行動はまったく進まない政策やロシア疑惑のめくらましに最高です。強いアメリカが好きなトランプサポーターをガスライティングのコントロール下におさめておくのにこんなに便利な方法はありません。もともとトランプのようなmale chauvinist(男性優越主義者)は軍事好きと相場が決まっています。大統領就任式にも北朝鮮のような戦車のパレードを希望したものの軍部に断られた(当たり前だ)ということが報道されています。

この金正恩状態のトランプをとめるべき議会も、共和党はトランプサポーターこわさに腰がひけてるし、過半数をとれない民主党は無力です。今や外交政策では中国やロシアの方がはるかに大人でまともな大国に見えます。「Make America Great」どころか「Make America Infantile」です。ちなみにトランプは習近平との首脳会談で「中国と韓国には千年におよぶ複雑な歴史がある」と教えてもらったのだそうです(絶望)。習近平でもプーチンでもいいからこいつを止めてくれないかと願うしかないというのがアメリカの現状です。

*「トランプ大統領4:トランプ政権はいつまでもつのか?」を更新しました。

https://nyqp.wordpress.com/

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nepotism(ネポティズム)

 縁故主義、縁故採用、縁者や身内をひいきする、という意味です。耳慣れない言葉ですが、それもそのはず、今年になるまで半世紀にわたってアメリカではネポティズムが問題になることはなかったからです。大統領の家族が政府の要職に就くことを禁じたanti-nepotism law(反縁故法)は、ケネディ大統領が弟を司法長官にしたことが政権の私物化と批判され、それを防ぐためにリンドン・ジョンソン政権下で制定されました。それ以来半世紀にわたってこの法律に抵触した例はありません。
 その誰もが忘れていたようなanti-nepotism lawが度々ニュースに登場するようになったのは、1月にトランプが娘婿、ジャレッド・クシュナーを大統領上級顧問にすると言いだしてからです。この反縁故法というのは、大統領の親族が閣僚となることは禁じているのですが、ホワイトハウススタッフについては定義が曖昧なのだそうです。大統領顧問は政権の要職ではありますが、閣僚ではありません。多くの批判を受けながら、トランプはクシュナーを無報酬にするから問題はない、と押し切りました。もちろんネポティズムの問題は公職の報酬なんてチャチな話じゃなくて、そのポジションに伴う大きな権力です。要するに、利益相反対策と称してトランプ・エンタープライズを息子たちに託したのと同じくらい本質的に無意味な対策を形だけとっているわけです。
 そして今度はイバンカです。当初、公職には就かないと宣言していたのですが、公式なポジションがないまま、外国の首脳との会談から機密情報のミーティングまで、あらゆるところに同席しまくってきました。ここにきて正式にホワイトハウスのアドバイザーの一人となることが発表されました。イバンカも無報酬だそうです。閣僚と違ってホワイトハウスのスタッフはネポティズムOKという法解釈がまかり通っているのに、わざわざ無意味な「無報酬」をうたうところが国民を馬鹿にしています。利益相反の種がありまくりのジャレッド・クシュナーとイバンカ・トランプが得る可能性のある利益は政府のケチな給料とは桁が違います。
 そういえば政権スタート前には、ジャレッド・クシュナーとイバンカには、若い世代として環境保護やLGBTや働く女性を支援する方向に向かってトランプ政権を中和させるという役目が期待されていました。今となってはおめでたい期待であったとしかいいようがありません。環境規制はとりはらう、女性の健康や子どもの貧困への支援は打ち切るという反環境、反福祉路線を突き進むトランプにブレーキをかける気配はまったくありません。イバンカはあれだけあちこちに出没していながら、何をしているのかは謎です。ジャレッド・クシュナーはトランプが「連邦政府の効率性を高めるために」新しく作ったWhite House Office of American Innovationをリードすると発表されました。政府を「ビジネス感覚で」改革していくそうです。もちろんまったく期待されていません。
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complicit(コンプリシット)

アメリカで先週末に突然ウェブスターのネット辞書の検索ナンバー1におどりでた形容詞です。ウェブスターによると意味は「helping to commit a crime or do wrong in some way」、和訳だと「共犯の、共謀した、加担した」といった意味になります。

この形容詞が話題になった理由は土曜日のSNL(サタデーナイトライブ)のパロディ。SNLといえばアレック・ボールドウィン扮するドナルド・トランプが有名ですが、今回の目玉はスカーレット・ヨハンソン扮するイバンカ・トランプ。香水のコマーシャル風のスキットで、その香水のネーミングがComplicit。パーティでドレスアップしたイバンカのバックに流れるナレーションは直訳するとこんな感じ。
「She’s beautiful. She’s powerful. She’s … complicit.」
(彼女は美しい。彼女はパワフル。彼女は…共謀)
「She’s a woman who knows what she wants. And knows what she’s doing. Complicit.」
(彼女は自分が欲しい物がわかっている。自分が何をしているか知っている。共謀)
「Complicit: The fragrance for the woman who could stop all of this, but won’t.」
(共謀:すべてを止めることができたのに、止めない女のためのフレグランス)
そして口紅をつけるイバンカの前の鏡に映っているのはアレック・ボールドウィン扮するトランプの姿。最後の落ちは「ジャレッド用コロンもあります」。

SNLのトランプネタでも久々の傑作です。SNLのサイトからの貼り付けだと日本では視聴できないようなのが残念ですが。

日本語のサイトでは、イバンカ・トランプは才色兼備みたいな肯定的な記述もよく見かけるのですが、アメリカでの現在のイメージはこのSNLのパロディそのもの。ちなみに夫のジャレッド・クシュナーの方も週明けにクシュナー家が所有するマンハッタンの売買で利益相反疑惑が大々的に報道されていました。家族ぐるみでの汚職疑惑が次々とわいてでる大統領でも、共和党にとって利用価値があるかぎり弾劾はありません。もう誰も「アメリカはバナナリパブリックか?」とは言いません。バナナリパブリックがデフォルトになっちゃったので。

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